Let's Study
Vol.71 術後の一般的な経過、入院期間~
2025.03.27
Let's study
私達が知っておきたい知識を専門家から学ぶこのコーナー。
小児の肝臓移植についての連載3回目の今回は、肝臓移植の手術後の一般的な
経過などについて伺います。
移植後の経過は、①ICU滞在期間の急性期、②一般病棟での回復期(退院後
3ヶ月程度)、③3ヶ月以降の維持期に分かれます。
移植直後はICUで厳重な管理が必要となります。免疫抑制剤を開始し、拒絶
反応や感染のリスクに注意しながら管理をします。血管合併症などでもう一度
手術が必要になる可能性もありますが、一般的に術後1週間程度で一般病棟で
の管理に移行します。
病棟に移動した後は、栄養や免疫抑制剤の調整をしながら、リハビリを進め、
生活の質を高めていくことが目標になります。状態の改善に伴い、点滴など体
についている管が少なくなってきますので、家庭での生活に近い形になってき
ます。しかし、この時期に、拒絶反応が起きることが多いため注意が必要です。
拒絶反応などの合併症がなければ、術後1ヶ月程度で退院できることが多いです
が、個々の状況によって異なってきます。
退院後は定期的な外来通院が必要です。特に移植後半年から1年間は感染症や
拒絶反応のリスクが高いため、慎重な経過観察が求められます。年齢とともに免
疫抑制剤やワクチン接種の調整を行い、保育施設や学校への社会復帰の適応支援
をしていきます。移植後1年経過以降も血管合併症の危険性があるため、定期的
な超音波検査が必要になってきます。
術後の経過は個々の患者さんによって異なりますが、安定した維持期に入っても
免疫抑制剤は不可欠ですので、より多くの患者さんたちが元気に過ごせていくため
に、内服指導や拒絶反応の早期発見など適切な管理が重要になってきます。
国立成育医療研究センター 移植外科
医師 内田 孟