Let's Study
Vol.69 肝臓移植が必要な肝疾患と病状
2024.09.17
Let's study
私達が知っておきたい知識を専門家から学ぶこのコーナー。
今回から5回に渡り、小児臓器移植センターの医師の立場から小児の肝臓移植について
伺います。
肝臓移植が必要な疾患とは、タンパクの合成や栄養の貯蔵、有害物質の解毒や分解、そ
して食べたものの消化に必要な胆汁という消化酵素の合成と分泌といった、ヒトが生きる
上で必要な肝臓が担う役割を自分でまかなえなくなる疾患です。これらの役割ができなく
なる状態は、さまざまな原因で肝臓が硬くなる病気(肝硬変)や、生まれた時から肝臓の
中の特定の機能を担う物質が欠損している病気(先天性代謝異常症)、急激に肝臓の細胞
が壊される病気(急性肝不全)、肝臓を発生母地として無制限に増殖する腫瘍(肝癌、肝
芽腫など)などにより正常な肝臓機能が阻害されることで引き起こされます。
肝臓の機能が妨げられると、胆汁が分泌できず皮膚や目が黄色くなる(黄疸)、体全体
に痒みが出るといった症状がでることがあります。またタンパクの合成ができなくなる
と、血が止まりづらくなる、胸やお腹に水が溜まる(胸腹水)という症状が出ます。解毒
や分解ができなくなると、全身の倦怠感、進行すると意識障害をきたす(肝性脳症)よう
になります。小児の場合は肝臓が持っているはずの特定の酵素が元々欠損していることが
あり、その他の機能が保たれているものの成長に必要な要素を合成できなかったり、解毒
ができずに発達に影響を与えたりすることもあります。肝臓は沈黙の臓器とも言われ、症
状が明らかになった時点では病気が進行している可能性があります。このため、早めに病
院を受診し、病気の早期発見と治療を行うことが大切とされます。
国立成育医療研究センター 臓器移植センター
医師 小峰 竜二